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私たちに抜け毛が起きやすくなる体質は3つあります。「炎症体質」「血行不順体質」「貧血体質」です。その中で、意外に思われることが多い体質が「貧血体質」です。

この話を聞いたとき、もしあなたが「えっ!」と思われたのであれば、あなたは女性ではないですか。なぜなら、貧血が抜け毛の原因になることを知らずに、髪の毛のトラブルで悩んでいる人は女性に多いからです。もちろん、貧血が原因で抜け毛が増える事実は男性にもいえることですが、女性の方が貧血が原因で髪の毛のトラブルに悩まされている場合が圧倒的に多いのです。

実は貧血にはいくつかの種類があります。その中で鉄分不足が原因である「鉄欠乏性貧血」といわれるものがあります。貧血患者にはこのタイプの貧血になっている患者が最も多く、貧血患者のうち約70%に該当します。そして、鉄欠乏性貧血は女性の約10%に見られます。また一説には、女性の約1/3が何らかの貧血状態にあるのではないかともいわれているのです。

女性も男性も鉄欠乏症貧血になる原因はいくつかあります。その中で一番の原因は、「栄養バランスの悪い食生活」が招く鉄分不足です。特に女性は、ダイエットのための食事制限によって鉄分不足になる場合が多いのが特徴です。

当然ながら貧血症状は、健康にとってよくないばかりか育毛の観点からもよくありません。ここでは、貧血がなぜ薄毛につながるのか、そしてどのような対策をとるべきかについて説明していきます。

貧血と抜け毛のメカニズム

私たちの身体は、血液が酸素や栄養素を身体の隅々まで血液が運んでくれることによって正常に機能します。血液の質が良いか悪いかによって、健康状態や育毛状態も変わってくるといっても過言ではないのです。そのように私たちの身体にとって大変重要な役割のある血液が、貧血状態になることは健康によくありません。

薄毛に関わる貧血の種類には、鉄欠乏症貧血と亜鉛欠乏症貧血があります。

鉄欠乏症貧血とは

私たちの身体は酸素と栄養素をエネルギーの源として生命を維持しているため、酸素が全身にまんべんなく運ばれなくなると、あらゆる細胞が酸素不足に陥ります。その結果、身体に良くないさまざまな症状がでてくるようになります。

血液の中で酸素を全身に運ぶ働きがあるものが、赤血球の中にあるヘモグロビンです。血液が酸素を運ぶ能力は、このヘモグロビンの総量とほぼ比例します。

鉄欠乏症貧血は、ヘモグロビンの生成にとって主な材料になる鉄が不足することによって、ヘモグロビンが作られなくなることで起こる貧血です。

鉄が足りないために、十分なヘモグロビンが作られず酸素が全身隅々まで届きにくくなります。すると、頭皮中に存在する髪の毛を作る働きのある毛母細胞にも、十分な酸素や栄養素が行かなくなってしまい毛母細胞の活動が鈍くなります。その結果、髪の毛の成長が止まってしまったり抜けてしまったりするわけです。

また鉄分は、黒髪をつくるメラニン色素の中に多く含まれているので、鉄分不足は白髪にもなりやすくなることもわかっています。

実は、この鉄欠乏症貧血の症状が出ている場合は、亜鉛欠乏症貧血が同時に起きていることが多いです。

亜鉛欠乏症貧血とは

亜鉛は、赤血球の表面の膜を作る際に必要とされ、不足すると赤血球の膜が弱くなりなります。赤血球膜の寿命は120日くらいですが、亜鉛不足の人の赤血球膜は120日以下で壊れてしまうため赤血球数のバランスが崩れて貧血になりやすいのです。

また、毛髪の主成分はタンパク質ですが、亜鉛の不足でタンパク質が合成できないと新しい毛を作れなくなります。

男性の場合、男性型脱毛症(AGA)の原因も亜鉛不足が挙げられます。亜鉛が不足することで、抜け毛を引き起こす男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑えられなくなるのです。

以上が、亜鉛乏症貧血が原因で薄毛になるメカニズムです。

貧血体質の特徴

貧血体質を漢方では、血液が不足した状態を血虚(けつきょ)といいます。要は、鉄分などが不足したため薄い血液になっているのです。そのため常に体力がない状態です。

貧血状態(血虚)の人の身体的特徴

1. 顔色:青白い

2. まぶたの裏:白っぽい

3. 爪の色:灰色、根元が薄い

4. 唇:白っぽく、ガサガサ

5. 手のひら:さらっとしている

貧血状態(血虚)の人の体質的特徴

1. 身体がだるい

2. めまいや立ちくらみがある

3. 冷え性

4. 爪にトラブルが多い

5. 肌荒れ

6. 口角炎が起きやすい

7. 抜け毛が多い

あなたの体質がこれらの症状に当てはまる場合は、貧血状態であるといえます。

貧血の原因はひとつではない

貧血は女性に多く見られる症状ですが、男性で貧血になってしまっている人もいます。男性の貧血の原因は、食事によるものが多いといえます。

特に一人暮らしの男性が、年齢が若いにも関わらず貧血の症状がみられる場合は、インスタント食品や栄養の偏った食事によって十分な鉄分や亜鉛が摂取できずに、そのことで血液が薄くなって貧血になってしまっていることがよくあります。

しかし、食事や生活習慣に原因があるとは思えない場合は注意が必要です。なぜなら、生活に特に問題がない男性が貧血になる場合は、胃がん、胃・十二指腸潰瘍、大腸がんなどの可能性があるからです。それらの病気によって、体内で出血が起きて貧血を引き起こしていることがあるのです。

また、痔や歯ぐきの出血などが原因で貧血になっている場合は、早めに治療をして貧血状態を改善していくことも必要です。

女性の鉄欠乏症貧血の原因とは

女性が鉄欠乏症貧血になってしまう場合は、前述の通りダイエットのための食事制限による鉄分不足が原因になることもあります。また、生理などで出血があるので男性より貧血になりやすいともいわれています。

そして、妊娠中や授乳期に鉄分不足になりやすいのも事実です。その結果として、産後に抜け毛に悩まされることになってしまうことも考えられます。

貧血体質(血虚)の対処法

貧血体質の(血虚)の改善方法は、基本的にバランスの良い食事と正しい生活習慣を心がけることです。特に、栄養バランスの悪い食習慣が続いている場合はもう一度食習慣を見直して、薄くなった血液を栄養豊富な質の良い血液に戻すことが大切です。

そのことで育毛効果のある栄養が、頭皮の中にある毛母細胞に血液を通して十分に行きわたるようになるのです。

毎日の食事を見直す

漢方では、髪にとって積極的に毎日食べたほうがよいものを宣髪食(せんばつしょく)といい、なるべく食べないほうがいいものを忌髪食(きはつしょく)といいます。

貧血体質にとっての宣髪食と忌髪食は、それぞれ以下の通りです。

宣髪食:ほうれん草:にんじん・山芋・かぼちゃ・ゴマ・大豆・牛肉・えび・ウナギ・マトン・カツオ

忌髪食:コショウ・唐辛子・ニンニク・ショウガ・ねぎ・海草・カレーライス・たばこ・コーヒー・緑茶

このタイプは血液を薄める食事やレトルト食品、インスタント食品は避けるべきです。たばこもコーヒーもよくありません。貧血体質(血虚)の改善には、食事を改め鉄分や亜鉛を増やし体力の増強を図っていく必要があります。

同時に、食事を通しての鉄分や亜鉛の摂り方には注意が必要です。

厚生労働省の発表では、鉄分の1日の必要摂取量は、成人男性で7、7mgで成人女性では10、7mgとされています。しかし、鉄分は亜鉛と同じで、摂取した量がそのまま体内に吸収されません。

鉄分には、肉や魚に含まれているヘム鉄と、緑黄色野菜に含まれている非ヘム鉄があります。比較的に吸収率が高いといわれる動物性ヘム鉄で、吸収率が10~20%です。食物性ヘム鉄では、吸収率は6%以下になってしまいます。

このヘム鉄の吸収率を高める方法として、ビタミンCと一緒に摂ることがあります。ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂取することで、吸収率が上がります。同じように非ヘム鉄も、ヘム鉄やビタミンCやクエン酸などと一緒に摂取することで吸収率が高まります。

このように吸収率が低い鉄分は、なるべく多くの種類の宣髪食を積極的に摂るようにすることが必要です。その時に、ビタミンCやクエン酸を多く含む柑橘類果物や梅干しなどと一緒に摂ると効果的です。

鉄分摂取の妨げになる飲み物とは

もともと吸収率の低い鉄分を効率よく身体に摂りいれるためには、鉄分の吸収を妨げる飲み物に注意しなければなりません。せっかく食事によって摂りいれても、鉄分の吸収を妨げる飲み物を過度にとっていては意味がありません。

コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶に含まれる成分のタンニンは、鉄分の吸収を妨げることがわかっています。特にコーヒーを飲むことで、鉄分の吸収率が約40%も下がるという報告があります。

貧血は健康にも髪の育成にもよくありません。貧血の多くは、特に鉄分や亜鉛を多く含んだバランスのよい食事を摂ることと、正しい生活習慣を送ることで改善されることが期待できます。ただ男性の場合は、長く続く貧血は重い病気の可能性がありますので早めに専門医に診てもらうことが大切です。

貧血が改善されることで生命エネルギーが高まり、充実した楽しい生活を送れるようなります。そして、正しい頭皮ケアや頭皮マッサージを実践することで、さらに髪の毛の成長にも力強さが戻ってきますので、貧血体質を早めに改善していくように努めましょう。